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ミリマスPの妄想日記・SSなど

星の王子さまミュージアムに行ってきたよ

 

星の王子さま』読んだことある?

 

 まず作品を知っていてくれないと寂しいので、こちらに青空文庫のリンクを持ってきた。よく知られている邦題は、簡潔かつ示唆に富む『星の王子さま』であろうが、こちらの訳者の大久保さんは『あのときの王子くん』という別れの哀愁を匂わせる訳出になっている。原題をフランス語から英語に直すと『the little prince』、直訳では『小さな王子さま』となり、少々味気ない。

 

 ただ、子供向きなのか、平仮名が多すぎて大人には読みづらいかも知れない。500円とかで文庫本を買って読むのがいいかも。今の時代だから、電子書籍で買えば今すぐ読める。本を読む習慣を持つ人なら、瞬く間に読み終わってしまうだろう。

 

縦書きですぐ読むにはこっち(青空 in Browsers)

あのときの王子くん

 

青空文庫の作品ページ

図書カード:あのときの王子くん

 

 最初読んだ時にはまぁなんとも、これを今まで読んでいなかったとはもったいなかったと思ったものだ。これだけ短くて、易しく、さらには優しく、人生で人が見失いがちなものをぎゅっと抱きしめていて、私たちがちゃんと注意を向けてあげれば、その抱きしめているものを笑顔で共有してくれるような、温かい気持ちになる物語だ。

 

ミュージアムに行った話

 

 星の王子さまミュージアムには、大雑把に分けて、作品の世界を再現した屋外の展示と、作者であるサン=テグジュペリの人生に関しての屋内の展示がある。

 

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 エントランスを抜けると、王子さまの像が出迎えてくれる。バラの並木道(?)の先には、恐らく作者の故郷であるフランス風なのだろう庭園と建物群。正直海外の風景には詳しくないので、フランスらしさとかはよく分からない。フランス語っぽい綴りの文字とかで判断してた。

 

 寒い時期だったから、咲いている花はほとんどパンジークリスマスローズだった。今年の3月31日で閉園になるので、もうバラが咲くことはないかもしれない。いい時期に来ていれば、素敵なローズガーデンだったんだろうな。

 

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わがままなバラのために、風よけのついたてを立ててあげる王子さまの像。

 

 やべ、全然写真がない。物語に登場するうわばみや、黄色いヘビ、星々の大人たちが立体になって現実世界に現れている。屋内展示の最後の方にも、大人たちやキツネ、バラなんかがいたなぁ。

 

 映像展示を見た後は、屋内の展示へ進んだ。サン=テグジュペリの生まれから、第二次世界大戦中、偵察飛行に出て戻ってこなかったという最期まで、かなりのボリュームで紹介されている。映像展示の中で、彼が最期に乗っていたとみられる偵察機が海の中から発見されたとか、彼の乗っていた偵察機を撃墜したというドイツ兵の話とかもあった。

 

 彼は貴族の子で(その当時貴族という言葉が正しいのかは分からないが)、城に住み、庭で翼をつけた自転車を走らせていたという。小さい頃から、親戚?に飛行機に乗せてもらっていたようで、空への憧れが強い少年だったらしい。小学校くらいの頃から、劇の台本を書いたりしていたらしく、なかなかの夢想癖の持ち主だったことを窺わせる。

 

 どうやって飛行機に乗れるようになったかは忘れてしまったのだが、確か、どちらかというと作家としての才能が先に見出され、空を飛ぶ職業に就くには難儀したというような話だったと思う。結局、北部アフリカでの航空郵便事業に参加することができた。サハラ砂漠に不時着したことがあり、『星の王子さま』やその他の著作にも、その時の経験が描写されているという。『星の王子さま』に登場するキツネも、砂漠のフェネックであるらしい。

 

 実際に『星の王子さま』を執筆したのは、アメリカのニューヨークに亡命している時だったと記憶している。『星の王子さま』を書く前から、メモや手紙の中に子どもの絵が登場していて、原型はずっと心の中に住んでいたんだと思わせる。『星の王子さま』の絵も味わいのあるスケッチだが、メモや手紙の中の絵も、いわゆるヘタウマともまたちょっと違った味わいがある。純粋な遊び心を感じる絵。

 

 そのあとは併設レストランに進むのだが、食事が売り切れてしまって、空腹に耐えながら駅まで帰ったのが悲しかった。周辺のレストランもいっぱいだった。併設レストランではデザートとドリンクしか残っておらず、それにも行列ができていたので諦めた。ホームページで、物語をモチーフにした料理の数々を見て楽しみにしていたから、余計に残念だった。帰り道で、イートインの軽食を色々とハシゴして食べることになったので、それはそれで楽しかった。

 

 レストランの先にはミュージアムショップがある。職場とか家族へのお土産を買って、あとは病気の羊のピンバッチとしおりを買った。サン=テグジュペリの味のある絵が好きだ。

 

感想

 

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 混んでたなぁ〜。まもなく閉園というのもあっただろうけど、平日の休みに行ってあれだったら、土日は人だらけだろうな。『星の王子さま』が愛されている証拠でもあるだろう。

 

 物語を3D化するのは一般的な手法だが、やっぱりその辺りは限界も感じるというか。私は悲しいことにオタクになり損ねている人種なので、文字や絵が模型になったくらいでは大して感動しないから、おぉ、あれじゃん、くらいの感じで自分にちょっと寂しい気持ちになる。

 

 個人的には作者の人生に関する展示が白眉。各時代ごとに、作者が過ごしていた部屋を再現してみたり、通路や各部屋の装飾が変わっていったりと、かなり力が入っていたように感じる。もとより、全然知らない作家の人生に歩み寄り、それを追体験しようという試みを経験したことがほぼ無いので、そういう意味でも新鮮・鮮烈な体験になった。

 

 不満だったというか、解釈違いだったのが、映像展示の解説の中で、王子さまに声をあてている部分があったのだけど、私の中では王子さまはあんなに高くて子供じみた声じゃなかった。もっと哲学者的で、落ち着いた声だと思う。映像のテイストから見ても相当昔に作られたものらしいから、その頃の流行りとかもあるのかも知れない。確かに王子さまの言動には子供じみたところがあるのだが……あまり納得がいかん。

 

 全体としては満足した。車がない場合、駅まで電車で出て、そこからバスで山を登らないといけないので、身体的には疲れた(私は車酔いするので、余計に)。でも良い気晴らしになったし、新しいことをたくさん知ることができた。箱根はまだまだ遊べるところがいっぱいあるし、また行きたい。