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ミリマスPの妄想日記・SSなど

『月は無慈悲な夜の女王』を読み終えた!

私はかなりライトなSF読者で、いろいろとつまみ食いをするように海外の有名どころを読んでいる。

 

今日読み終わったのは、アメリカのロバート・A・ハインラインが書いた『月は無慈悲な夜の女王』という長編SFだ。

 

少し前までは電子書籍で買って、通勤中にスマホで片手で読めるというスタイルも気に入っていたのだが、電子書籍よりも手元に残る感じがする実物の方が好きで、Amazonで紙の本を買っている。

 

一緒に買った『ソラリス』もまぁまぁ厚かったが、『月は無慈悲な夜の女王』は、おそらく私が読んだ文庫本の中で一番厚かった。解説まで入れて700ページ近くある。これを見てビビり、『ソラリス』を先に読んだのだった。

 

月は無慈悲な夜の女王』は、『ソラリス』を読み終わったその結構なモチベーションというか、「読書というのはなんて面白いんだ!!!」という勢いのままに読み始めた。長いは長いが、最初のうちから展開が早く、物語にぐいぐいと引っ張られていく。

 

流刑地として利用され、穀物を搾取されてきた月世界が、地球に反旗を翻す、というのがおおまかな筋書きだが、いわゆる宇宙戦争モノとは違い、月には何もない。宇宙船も水爆ミサイルもない。月の世界は地球から来た役人に支配されている(形上は支配されているが、月世界人たちのガッツというか、特異な環境で生まれた自分達の暗黙のルールに従う力が強く、月の側も地球側を憎み、現地の行政府を利用しまくっている)。

 

この状況を、主人公のマニーと、月世界のマザーコンピューターみたいなやつであるマイクと、めちゃくちゃ頭が良く自分の思想に忠実なデ・ラ・パス教授、熱意溢れる女性活動家のワイオミング、彼らがどんどん物事を決めていき、主人公は巻き込まれるようにしながら地球に対する革命の計画を進めていく。

 

私のお気に入りのキャラクターは教授だ。彼は非常に高尚な思想家・戦略家で、時には味方をも騙すような真似をしながらも、先を見据え、決して動揺しない。頭が切れるし、年の功もあるのだろうが、彼はきっとコンピューターのマイクと渾々と話を詰めて、そのことでも自分を信じきっていたのではないだろうか。マイクは月世界の全てのカメラや電話などにアクセスできるし、それらから集めた情報をもとに素早く計算して物事の起こる確率などを教えてくれる。もっと言えば図書館の本なども一冊数秒とかで読み、そしてその全てを記憶できるので、容量と計算力で言えばもっとも頭がいい登場人物だ。

 

登場人物と言ったのは私の言葉選びにおける不手際ではなくて、マイクはかなり人間的な鋼鉄の塊だからだ。彼は自意識を持ち、つまり自分が何者で何ができるのかを分かっている。コンピューターというのは命令を与えられ、そしてそれを実行したりしなかったりするのだが、マイクは自分で考え、アイデアを提案し、人間を動かしたり、人間の命令をこなしたりする。彼は最初、ジョークを考え出し、それが面白いかどうかを主人公マニーに尋ねた。きっとそのような命令のプログラムは組まれてなかっただろうに。

 

その人間的なコンピューターであるマイクと話をして、教授は自分の判断をより強く確信していたんじゃないか。そしてその高度に政治的で戦略的な話し合いを、マイクは「つまらない話」だと言っていたのも面白い。政治や戦略が面白いのは人間だけなんだろうか?

 

実際、この架空の政治、読者には何も関係がない政治の話はめちゃくちゃに面白かった。人間の集団がどう動くのか、どういう性質の人間をどう動かせばどうなるのか……まるで社会実験を小説の形で読んでいるような気分になる。テーマとしては奴隷の解放のような側面もあり、アメリカだな〜という感じもする。

 

結構読むのには時間がかかったが、面白かった。ハインラインを読んだのも初めてだったが、主人公の独白が高頻度で挟まってくる変わった文体だった。次は何を読もうかな。